いい夫婦の日によせて
賢人。砂の家の執務長。敏腕まじない師。
いくつかの肩書を思い浮かべ、ウリエンジェは白魚の身体を見下ろした。腰のくびれから尻にかけてを撫ぜると面白いほどに慄き、薄い唇に笑みをのせる。
氏名を表すのとは別に存在するそれは、ウリエンジェを突き動かし、時には縛った。ひっきりなしに酸素を吐き出す彼はどうだろう。
汗で張りついた前髪を避けて表情を窺う。淡褐色の瞳はひたひたで、今にも涙がこぼれ落ちそうだった。
演者。彼を適切に表現する言葉と思う。むしろ自身に根づいた印象と言うべきか。長きに渡り、多くの役柄を演じてきた「サンクレッド」の真実は何処にあるのだろう。
「ウリエンジェ」
砂糖が溶ける甘さで愛しい人が名を呼ぶ。途端に繋がりあった部分が熱くなり、ウリエンジェの思考を奪っていく。後ろ首に絡まった両腕に引き寄せられ唇を重ねた。肢体はもつれているのに、心は際限なしに解けてゆく。
「サンクレッド」
馴染んだ名を確かめるように喉を震わせた。
「……もっと奥にきて」
耳元で囁き、うっとりと目を閉じるサンクレッドに、優しくしたいのか酷くしたいのかが分からなくなる。分かるのは彼が何も「演じて」いないこと、全てを委ねていることだ。
「仰せのままに」
欠片だけ残った理性で思う。ふたりの関係を表すなら、相棒。または伴侶と言ったところか。
ただ、この瞬間は何にも縛られずにいる。