テイスト・マイ・スキン

ナカに出して欲しい

 ウリエンジェと肌を合わせる際、彼を受け容れる瞬間が好きだった。
 切先が後孔へ宛てがわれると誘うように窄まりがしゃぶりつく。
「ッあーー……」
 ウリエンジェの長いそれが、サンクレッドの中を満たしていく。中程まで挿入させ馴染ませた後、入口まで引き戻し、再び突き上げながら奥へと侵入を図る。
「ん、ぁあっ、あッ」
 指と舌で解された内奥は、抵抗することなくウリエンジェを導いた。
「ふ……っ」
 自身を埋め込んだウリエンジェが首筋で吐息を漏らせば、泡立つ肌。快楽の底へと叩き落とされるのだと、この身体に、記憶に、刻みつけられている。
 ずるり。長く緩慢に腰を動かされ、サンクレッドは白い喉を晒け出す。内臓を引き摺り出されるような感覚に声が抑えきれず、唾液がひとすじ零れ落ちた。
「あぁっ。そこ、イイ……もっと……」
 腹側の敏感な箇所を雁首でゆるゆると擦り上げられる。様子を窺う焦ったさに、無意識で腰を押しつけ快感を拾う。
「此方も」
 ウリエンジェの両手が胸に這わされ赤く熟れた頂きへ辿り着く。乳輪を指の腹で撫ぜてからやや乱暴に弾くと、咥え込んだ内壁の締め付けが一層と強くなった。
「っは……サンクレッド……気持ちいいですか?」
「ぁン、いい、気持ちいい……」
 触れていない陰茎から先走りがトロトロと溢れ出して悦びを主張する。
 ふっくらとした唇から舌先が覗いてウリエンジェは引き寄せられるように口付けた。
「ん、ふぅ、んン」
 サンクレッドはキスが上手い。行為の始まりこそ翻弄されるのは自分だが、繋がりあった時だけ彼のキスは少し拙くなる。それがとても愛おしい。
 歯列をなぞり舌の裏側を刺激するのに合わせて小刻みに揺すってやると、腰に回された脚が促すように絡みつく。
「ッあ、ウリエンジェ……イキたい。イカせて……!」
 朱が滲んだ目元で請えば、ウリエンジェは返事の代わりに瞼へ唇を落とす。
「ヒっ、ぁあーーッ……」
 両足を肩に担ぎ上げられ結合が深まる。
 じゅぶじゅぶと交わりあった場所から白濁と潤滑油が滴り落ちて尻から背中側を濡らしていく。それすら劣情を煽り、サンクレッドは肌を震わせた。
「あっ、ぁ、あぁっ」
 奥を抉りながら責め立てられ足先が突っ張る。肚の中に存在するウリエンジェが、焦らす事なく欲を追いかけ律動を早めた。
 全部、奪ってくれ。
 桃色に染まる太腿へ添えられた腕を引き寄せて爪を立てる。
「いく……イクっ、ウリエンジェ……!」
 蜜を纏わせた竿に手を伸ばし訴えた。とめどなく愛液を垂れ流すそこは触れるだけで、ひくひくと痙攣が止まらない。
「ええ、貴方の達する顔を見せて」
 サンクレッド。
 甘さを溶かした低音で囁かれ内奥が蠢く。受け容れたモノを離すまいと収縮を繰り返し、上り詰める。
「ぅ、ア、……んぁあああぁっ」
 握り込んだ陰茎から体液を吐き出してサンクレッドは達した。解き放たれた悦びを味わいながら楔に穿たれ、視界が白む。
「……ぁーーっ、イク、いくッ、あああぁあッ!」
 寄せては返す絶頂に全身を支配され、はしたなく声を上げ続ける己を恍惚として見下ろす男へ縋りつく。
「……ッ、サンクレッド、私も…」
 うんうん。とサンクレッドは頷いてみせた。折り畳んだ身体が隙間を奪って隔たりを蕩けさせる。
「サンク……サンクレッド……くっ、ぁっ」
 低い呻き声を上げウリエンジェは吐精した。腹の上がどろりと白濁で溢れる。
「あ……何で外に出すんだよ……」
 乱れる呼吸を整えながらサンクレッドは不満を漏らした。湿り気のある薄い唇を受け止めると言葉が返される。
「此方に戻られてから、薬を服用されてないでしょう?」
 ウリエンジェの言う薬は諜報用に使用していた物だ。女性とは避妊に、男性とは事後処理に利用される。
「必要ないだろう」
「いいえ。先日、体調を崩されたではありませんか」
 何で知ってるんだよ。
 妙なところで感の鋭いウリエンジェに眉を顰める。あの日は億劫で、そのまま寝入っただけだ。少し腹は下したが。
「事前確認を怠った私にも非があります」
 そう告げてウリエンジェが寝台の抽出し─避妊具や潤滑油が入っている─に、手を伸ばしたのを引き留める。
「いい。要らない」
「いけません」
 抽出しの前で静かな攻防戦が繰り広げられる。腕力ではサンクレッドが上だが体格差と、行為後と言うのもあり力の差は五分だった。
「あっちじゃ、散々出してただろう⁉︎」
 痺れを切らしたサンクレッドは抽出しの避妊具を取り出して、ウリエンジェに投げつける。豊かな睫毛に縁取られた金目が驚くように見開いた。
 そのまま枕にうつ伏せて洟を啜る。視界がぼやけて感情が思考に追いつかない。
 お前と以外、寝るつもりは無いのに。
 
 かさかさとした音が耳に届いて、ウリエンジェが律儀に避妊具を拾う気配がした。ややあって、痩躯の身体がサンクレッドに覆い被さる。
「あちら側での出来事は、申し開きのしようもございません」
 ウリエンジェは耳打ちすると項に吸い付く。背中側から抱き寄せて、股ぐらをくぐり雄同士を重ね合わせた。
「ですが、貴方はもう……ひとりの身体では無いのですから」
 挿入を真似る腰の動きに一度、達した身体が跳ねた。
「ふぁ……っ、あ」
 言葉こそ穏やかなウリエンジェだが譲る気は無く、時折こうして強硬な手段に出る。括れた部分を掌で刺激されるのも、愛撫の合間に唇で触れられるのも、サンクレッドが好むと知っていて。
「分かっ……た……ぁ」
 どうにか声を絞り出しウリエンジェへ伝える。先を期待する腹の奥が熱くて、うっとおしかった。
「ありがとう存じます」
 安堵する声色と表情に自然と顔が綻び、甘いなと思う。身体を知り尽くした男が、自分を求めるのは気持ちがいい。
 サンクレッドは深く口付けると器用に身体を反転させ、ウリエンジェを組み敷いた。悪戯な光を瞳に覗かせながら脚の間へ屈み込む。
「あっ」
 頭の上で狼狽えるウリエンジェの声が聞こえて、竿を唇で咥え込んだサンクレッドは満足そうに目を細めた。見せつけるように舌全体を出して上目遣いで言ってやる。
「飲むなら問題ないよな?」
 俺だって、お前の身体を知り尽くしているのだから。