ワンドロお題『照れるサンクレッド』
かつて幽閉された少女の手を取り逃亡した力強い両手が、自身の顔を覆い隠す。白銀色の前髪から歪な爪先が微かに覗いていた。
それはサンクレッドにとって照れ隠しの仕草だったが、生憎と色白の肌は紅色に染まっている。掌だけでは隠しきれない両の耳が、首筋が、白いコートを引き立たせていた。
平常なら顔色ひとつ変えない男が、だんまりを決め込む。なんと愛らしい。
ウリエンジェは、そっと笑みをこぼした。
懐に入れた相手こそ無防備になるサンクレッドだが、互いの関係が明確になってからは反応が顕著だ。
「紅茶のおかわりは如何です?」
ティーカップへ琥珀の液体を注ぐ。ほとんど習慣となった素知らぬ顔はウリエンジェにとって、勿体なさからだ。
隠された表情、染まる肌、ぎこちない沈黙。その全てがウリエンジェの発言に対するものだった。紅茶を飲み干す合間に眺めても、飽きがこないだろう。いっそ色気があると言ってもいい。
ウリエンジェは向かいに腰掛けると、ティーカップにミルクをつぎ足してスプーンを回した。沈黙は破られずにいる。
「サンクレッド」
思わず伸ばした手をサンクレッドに奪われた。彼の口が開き、そのままガブリと指が噛まれる。ウリエンジェは初めこそ驚いたが、腹いせのように続けられる甘噛みに苦笑した。
「少しも痛くありませんよ」