メイドの大先生
どうしてこうなった。
石の家。ウリエンジェの私室。いつものように任務を終えたサンクレッドが、扉を開けて目にしたのは黒いスカートを翻したウリエンジェだった。両手で優雅に裾を持ち、恭しく一礼する。纏った白のエプロンに誂えられたフリルが、ふわりと舞う。
「お戻りなさいませ」
長身の美人は、あろうことかメイド服を着ていた。
いつもの夜だった。
ウリエンジェの淹れた紅茶を飲み、他愛のない会話をする。話題が途切れ、唇を重ね合わせた後、なし崩しでベッドへ。服装のことなど知らないという体で。だから、尋ねてみた。
「お前……その格好はどうした」
「お嫌いですか?」
盛大にため息をつく。長い首は高めの襟で覆われ、くるみボタンで留められた衣服が禁欲さを、直線的な肩からはパフスリーブで上腕を愛らしく演出している。ウリエンジェが顔を綻ばせる度、感情をあらわして跳ねるフリルも気に入らなかった。つまり、よく似合っている。
「……女物を着た男に抱かれる趣味はない」
「でしたら、試してみましょう」
ウリエンジェの指先がヘッドドレスを解く。それをサンクレッドの口元へ落とすと、布越しに熱い舌が触れた。
「ん……っ」
ほとんど習慣で開いた唇に、舌先が侵入してくる。ぴちゃぴちゃと水音を立て、弄ばれる口内は情欲をそそるより、こそばゆさを感じた。
「サンクレッド」
ひとしきりキスを味わったウリエンジェは、唾液で湿るヘッドドレスを外すと、その金目を三日月に細める。この瞳は、いけない。
「ご奉仕、させて下さいますよね?」
メイドが供する甘ったるい菓子の声音で囁かれ、サンクレッドは頷かざるを得なかった。