ワンドロお題『キス』
上唇と下唇。
ふっくらとした薄紅色のそれが触れたあと、音を立て吸われる。
サンクレッドのキスは巧みで唇はマシュマロのように柔らかく、砂糖菓子のように甘かった。実際、彼が口をつけているのはアルコールなのだが。
床に置かれたエールを煽り、再度サンクレッドの顔が近づく。今度は緩く甘噛みされ、口唇を舐められる。
「ふふ」
わずかに皺の寄った目元がとろりと溶けた。もたれかかる重さと体温が心地よい。
「ご機嫌ですね」
飲みかけのエールをサンクレッドから受け取り、金色の液体で喉を潤す。空になった緑色の瓶を見てウリエンジェは尋ねた。
「どうされます?もう一本開けますか」
「もう少し」
このままで。
サンクレッドの両腕が褐色の後ろ首に回り、顎へと口付けた。鼻先を擦り合わせて、アルコールを漂わせた薄紅色が開かれる。
「なぁ。お前からしてくれよ」
赤々とした舌に吸い寄せられ、ウリエンジェは唇を重ねた。お互いの舌を撫でさすり、唾液を絡ませる。上顎を舌先で刺激すると、サンクレッドの手が鈍色の髪を乱した。
「……ふっ、」
口内を味わった後の静寂が、ウリエンジェは好きだった。繋がりを示す透明な糸も、潤んだ淡褐色の瞳も。
白い指先が薄い唇をなぞり、サンクレッドの口元が悪戯に笑う。
「もう一回」
幼子が新しい遊びを覚えた時と同じ響きで強請られる。ウリエンジェもまた、それに応えようと顎に手を添えた。
「何度でも」
足元に転がる空き瓶が、からりと鳴った。